私の夢は、お母さんになることだった。
16歳の誕生日、「もう子どもを産んでも大丈夫な年齢になった!」と本気で喜んだことを覚えている。
事故や病気で「子どもが産めません」と言われたらどうしよう。
そんなことを勝手に想像しては、本気で怖くなっていた。
今思えば、それくらい私はお母さんになることに憧れていたのだと思う。
そして夢は叶った。
大好きな人と結婚し、3人の子どもに恵まれた。
もちろん人生にはいろいろあったけれど、私は今も幸せだと思っている。
最近になって、どうしてあんなにお母さんになりたかったのだろうと考えてみた。
やっぱり一番の理由は、私の母だ。
専業主婦だった母は、子どもだった私の世界そのものだった。
料理が好きで、おやつもほとんど手作り。
ダンボールでテレビを作ったり、秘密基地を作ったり、牛乳パックで家を作ったり。
テーブルがステージになってベストテンごっこが始まり、泥んこ遊びや木登りを楽しんだ。
誕生日には自分でケーキを焼き、カレーを作って友達を呼んだ。
歌ったり、踊ったり、作ったり。
母はいつも工夫して、毎日を楽しくしてくれた。
父のことも大切にしていた。
「お父さんが頑張っているから美味しいご飯が食べられるね」
そんな言葉を自然に伝えてくれた。
夜遅くになってから部下を連れて帰ってくる父を、いつも笑顔で迎える母が私は好きだった。
そして子育てが少し落ち着くと、今度は自分の好きな書道を思いきり楽しんでいた。
忘年会の数は父より多かったかもしれない。
そんな自由で楽しそうな母を見て育った私は、きっと母のようになりたかったのだと思う。
けれど実際に母になると、私は「理想の母」「理想の妻」になろうとして苦しくなった。
母が大切にしていたのは、家族だけではなかった。
自分自身の楽しさや好きなことも大切にしていた。
でも当時の私は、そのことに気づかなかった。
家族を大切にすることと、自分を大切にすること。
その両方があってこそ、母はあんなに楽しそうだったのかもしれない。
今になって、少しずつそんなことがわかってきた。